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デジ・ライフコラム

色のお話

L, M, S錐体(光が当たると電気信号を発生)

みなさん、こんにちは。湘南台校の小野です。

皆さんもパソコンで図形を描く時に、色を選んでいると思います。世界は色であふれていますが、実はあなたが見ている色と他の人が見ている色は違うものです。今回はそのような色のお話をしたいと思います。最初に色って何?というお話をした後で、RGBやHSV,HSLといったPCなどでお馴染みの色を指定する方式についても触れたいと思います。

光の波長

まず光から説明します。光は空間を伝わる電磁波という波の一種です。TVやWi-Fiの電波も電磁波です。共通しているのは秒速30万kmという速さで伝わることで、違いは波長の長さです。波は図1のように表せますが、波の山と山の間の距離が波長です。電波の波長は1mm以上ですが、眼で見ることができる可視光の波長は1nm以下です。1nmは1mmの百万分の1というとても短い長さです。

波長
図1 波の波長

色って何?


結論から言うと色とは光の波長の違いを区別する眼の機能と脳によって作り出される感覚です。分かりにくいので、以下に説明していきます(理解しゃすいように、説明はかなり簡単化していますのでご容赦ください)。

光を放出するものの代表として、まず太陽を考えます。全ての物はその温度に応じて電磁波を放射しています。太陽表面の温度は非常に高く約6,000℃です。この温度では放出される電磁波の波長は可視光の波長となり、図2に示すようなものになります。図の横軸は波長で、縦軸はその波長で太陽が放出している光のエネルギーを示しています。

波長ごとの太陽光のエネルギー
図2 波長ごとの太陽光のエネルギー

可視光の波長は380nmから780nmで、太陽が放出する光のエネルギーが最も大きい波長の所にあることが分かります。これは人間が太陽の下で進化してきたためです。図中の色の帯は理科で勉強した「プリズムを通過した太陽の光は虹色に分離する」に相当します。波長と色の対応は例えば赤色(640-770 nm)、緑色(490-550 nm)、青色(430-490 nm)となっています。

色を感じる仕組み


光の3原色を知っている方は多いと思います。赤色、緑色、青色の3原色を適当な割合で混合することにより、全ての色を作り出すことができます。図3は3原色を説明するのによく使われる図です。赤、緑、青の3色が照らしている場所は白色になっています。また赤、緑の2色が照らしている場所は黄色になっています。

光の三原色
図3 光の三原色

ではなぜ、3原色なのでしょうか。人間の眼の網膜の中には図4に示す光が当たると電気信号を発生するL錐体、M錐体、S錐体という視細胞があります。このL、M、S錐体の各々は赤色、緑色、青色の波長付近の光で大きな信号を発生します。この信号が脳へ伝えられ、脳内で色という感覚が作られます。白はL、M、S錐体の信号の大きさが同程度の場合に相当し、黄はL、M錐体の信号が大きく、S錐体の信号が小さい場合に相当します。

L, M, S錐体(光が当たると電気信号を発生)
図4 L, M, S錐体(光が当たると電気信号を発生)

太陽光の下でレモンが黄色に見える理由は以下の通りです。太陽光の中には全ての色の波長の光が含まれています。太陽光がレモンに当たると青の波長付近の光が吸収され、レモンで反射され眼に入る光は赤と緑の波長付近の光だけになってしまいます。このため、S錐体の信号が小さくなってしまい、レモンは黄色に見えます。

以上の説明から分かるように光に色が付いている訳ではありませんし、レモンの表面に色がついている訳ではありません。色は光の波長を識別できる錐体の3つの出力から脳が作り出す感覚です。また錐体の働きには個人差があるため、最初に述べたように実は色の感覚は人によって違います。そのため規格にある色は多数の人が参加した実験の平均値から決められています。さらに言うと生き物の中には錐体が3つではないものがいるので、彼らは我々とは全く違う世界を見ていることになります。

太陽光はほぼ白色で、そのエネルギーは図1に示すように全波長に分布しています。一方、図3の白色の光は赤色、緑色、青色の純色の光から作られているので、そのエネルギーは図5のように3本の線で表せるはずです。図1と図5の形は全く違いますが、人はこの2つを識別できず、どちらも白色として認識します。これはどちらの光でも3つの錐体の信号の大きさが同じになるためです。同じことが白色LEDや白色蛍光灯に対しても言えます。この2つも発光の原理が異なるため、その波長ごとのエネルギーは太陽とは全く違いますが、やはり同じ白色に見えます。このことからも色が波長ごとの光のエネルギーという物理的な量ではなく、脳内で作り出される感覚だということが分かります。

三原色による白色の波長ごとのエネルギー
図5 三原色による白色の波長ごとのエネルギー

カラーTVの色は光の3原色に基づいており、赤(R)、緑(G)、青(G)を使って色を作り出しています。もし白色に見えるのが太陽光のような光だけだったら、カラーTVは全ての波長の光を発生する必要があり、カラーTVの実現は桁違いに困難だったはずです。

RGBとHSL


色を指定するのにRGBという3つの要素に対する数値(以下では0から255とします)を使うのは上の話から分かっていただけると思います。RGBの数値が全て0なら黒色で、全て255なら白色になります。ただRGBは数値を変えた時の色の変化が分かり難いので、直感的に色を扱えないという問題がありました。この問題を解決するために考えられた色の指定方法にHSVやHSLがあります。MicrosoftのOfficeでは色の指定にRGBの他にHSLが使われています。色を指定するには3つの要素が必要ですが、HSLでは色を指定するために色相(Hue)、彩度(Saturation)、輝度(Lightness)の3つの要素を使います。

色相(H)は色の種類で、数値が0から255まで増加していくと赤→黄→緑→シアン→青→マゼンダ→(赤)というように色が変わっていきます。彩度(S)は色の鮮やかさで、255だと最も鮮やかで0だと灰色になります。輝度(L)は色の明るさで128だと純色で、255だと白色、0で黒色になります。

HSLによる色の指定
図6 HSLによる色の指定

HSVやHSLは色の指定が直感的で、色を濃くしたり明るくしたりするのが簡単になります。そのため多くのソフトの色の指定で使われています。

いかがだったでしょうか。色の不思議と色を指定する際によく使われるRGBとHSLについてご紹介しました。すぐに役立つ話ではありませんが、皆さんの参考になれば幸いです。

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